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タバコに火をつけた。
星のよく見える寒空の下、私は白い息を吐いた。
あてのないツーリング。その終着点は今時珍しい、広々とした公園である。
遠くで響く車の走行音を除いて何も聞こえてこない。まるで人間以外は世界がまるごと眠っているようだった。
再びタバコをくわえ、口の中に煙を流し込み、冷たい空気とともに吸い込む。また白い息を吐く。
心の端に残り続けている蓄積した悪い感情が、煙に乗って宙に消えていったようだった。
ただ走ることに集中して、たどり着いた場所の景色を眺めて、僅かばかりの達成感と共にタバコを喫む。これをやれば1週間分のストレスくらいは吹き飛んでしまう。
さて、そろそろ帰ろうか。と、余韻と共にタバコを灰皿に押し込み、私は単車にまたがった。
ささやかな幸せを糧に、明日もまた生きるために立ち向かうのだ。